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【第3回】

仲間の情報は
相手以上に入れておくべき

今のGKはビルドアップの担い手でもあり、足元の技術も要求されます。フィールド選手と同じような練習も必要ですか?

そうですね。ウオーミングアップの時、フィールドと一緒にパス回しやパス交換をやるのはいいことですね。GKのキャッチングやステッピング、そしてダイビングなどを入れた後に全体練習へと入り、戦術トレーニングをこなすことが大切です。

――シュートを防いで遠くに蹴るという昔の役割から、現在はGKに求められることが増えました。

はい、ただ求められるものもあればなくなったこともあり、増え続けているわけではないのです。かつてGKの主な仕事と言えば、捕球したらとにかく遠くまで飛ばせと指示されたので、誰もがキック力を鍛えたものです。今でもそれは重要ですが、味方の足元に正確につなぐスローイング技術も同様に大切。以前はキック力のないGKは使えないと言われ、ハーフウエーラインは確実に越えろと教えられました。それでけがをした選手もいたんですよ。

――試合前の準備で欠かせない要件を教えてください。

前日練習はコンディション調整も必要ですが、チーム内の様々なことを確認しないといけません。セットプレーをはじめ、この人は(変更:このプレーヤーは)疲れ気味とか元気とか、  この人は(変更:このプレーヤーは)初出場といったチーム情報を頭に入れておくのは、極めて重要な任務になります。敵の分析ももちろん大切ですが、仲間の情報は相手以上に入れておくべきです。

――FKの対処法というのは勘働きも左右しますか?

う~ん、勘が働かないとは言えませんが、直接決められないことが大前提です。シュートコースを意識し、ハイボールに自分が先んじられるのか、味方のポジション取りはどうなのか、いろんなことを瞬時に見極めないといけません。まずはシュートに対しての準備、次にクロスボールの処理を考えることです。

――現役時代に大勢の指導者と出会いましたが、小澤さんが最も影響を受けた方とは?

中学や高校でもその年代に適した指導者と巡り合い、プロでも素晴らしいGKコーチや監督がいました。ただ自分に新しいものを注入し、世界観を広げてくれたのは(2010年に所属した)パラグアイのクラブチームのGKコーチです。

――高校生年代を指導するに当たって難しいこととは?

SNSなどの膨大な情報を取り除くことの難しさを年々痛感します。何かを伝えると、「あっちではこんなふうに言っている」となり、ある選手が成長したとしても、「あっちの選手はもっと成長している」といった具合です。世の中にあふれる情報をたくさん持っている子のほうが、技術や精神面で成長した子より期待されるような傾向があります。その子にとって有益な情報だけを提供したいのですが、難しいですね。

――指導する喜びとは?

すべてですね。私は子どもたちにも保護者様にも小澤コーチではなく、「ひでさん」と呼んでもらいます。指導者ですが、子どもたちとサッカーを通じて共鳴し合っているんです。私の知らないことを知っている子どもも大勢いるので、こんな見方をするんだと感心させられることがありますね。  例えば「練習中にチームがバタバタしている時、GKとしてどんな行動をしようか」と全員に尋ねました。「声を掛ける」「手をたたく」「みんなで盛り上げる」という中で、「ハーフタイムにトイレに行かせる」と提案したGKがいました。確かにトイレに行く前はそわそわすることがあるので、追い込まれた選手とチームを救う手段のひとつです。GK目線での感覚ですが、私は子供たちの純粋な発想を大事にしています。

――スパイクのほか、GKはグローブの手入れにも余念がありません。

グローブに救われたケースというのは実に多く、それはぎりぎりのところでボールを弾いて失点を防ぐだけではなく、怪我をしてもおかしくない状況を保護してくれることもあります。ですから用具を大事にしてほしいですね。グローブを使った後は汚れをシャワーなどで落とし、クリーナーで手入れをして日陰干しするのがいいです。

――高校生や中学生GKへのメッセージをお願いします。

自分の個性を伸ばし、プレースタイルに生かしてほしい。それを最大限に表現することです。GKにもいろいろな特色の選手がいますが、自分はこんなGKだと誰にでも自信を持って言えるようになってもらいたい。自分にはこんな武器と特長があるので、これを戦い方にも取り入れていただきたい、と監督に伝えられるだけのGKを目指してほしい。やはり個が生きてこないとチームを勝利には導けません。身体能力が高いだけ、まじめなだけでは物足りない。誰よりも個の力が強くないといけません。
 2番手、3番手、4番手GKとは周りが決めていることであり、1番は自分でここは俺の居場所だという自負心と責任感が必要。それだけの練習を積み、それだけの情熱を持ってサッカーと向き合い、ゴールマウスに立っているという思いが大切なのです。

――現代GKに一番求められていることとは?

高いマネジメント能力です。自陣はGKがバランスを取り、試合をコントロールすることが一層求められています。GKのパスひとつで流れが変わることもある。これは高校生にとっても大切な要素と言えます。

(文:河野 正)

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プロフィール

小澤英明

小澤英明氏(おざわ・ひであき)

1974年3月生まれ、茨城県出身。

水戸短大付高(現・水戸啓明)から鹿島アントラーズに入団し、横浜マリノスやFC東京、アルビレックス新潟など国内外の6クラブでプレーした。2012年に引退。J1通算45試合出場。13年から指導者としてセカンドキャリアをスタートさせ、14年にGK専門アカデミー「アルケーロス」を設立し、16年にはフィットネスクラブ「アルケーロスライズ」を開設した。茨城県行方市のなめがた大使。