


―――小澤さんは2012年限りで現役を退き、翌年から指導者の道に入りました。どうやって「教えること」を学んだのでしょうか?
これまでお世話になった学校の顧問の先生や監督、日本人と外国人を含めたGKコーチのほか、サッカー界以外でお付き合いしている方々からいただいた多くのアドバイスを自分の中で整理しました。それらを振り分け、これは育成年代で反映できるとか、中学生には適しているけど小学生には向いていない、というふうに分類しました。カテゴリーに応じてプランニングしたのです。
指導では毎回違うメニューを考案し、どの選手にも変化が生まれるように知恵を絞ってきました。レッスンを受けたら必ず手土産を持って帰ってもらいたい。子どもたちは例えば保護者に送迎してもらうなど、何かしらのサポートを受けているわけですから、得るものがなければいけません。受講することで変化があった、成長できた、週末の試合に生かせそうだ、といった収穫があるようにアイデアを考えているんです。
―――高校生年代と向き合うに当たり、最も大切にしていることとは?
うちのアカデミー出身で、講師としてお手伝いしてくれている大学生にも伝えているのですが、育成年代は中学生までで高校生はもうプロに上がっていく年齢なので、そこを視野に入れた指導がとても重要になってきます。Jリーグは今年4月から、プロ契約を締結できる年齢制限を満16歳以上から、満15歳に達した日以後の最初の4月1日以降に変更したので、早ければ中学卒業後の4月にはプロ契約を結べるようになるわけですから。私は現役の頃から若い年齢でプロになるのがいいと感じていましたし、指導者になった13年前からもそういうことを意識してきました。

―――なるほど。それでは中学生年代の指導で最も大切にしていることは何でしょうか?
私が特に心掛けているのが、“入り過ぎず、離れ過ぎず”ということです。それは技術面でも精神面でも、私生活においても、すべての局面に共通したことです。多感な時期なので、その子に入り過ぎるとどこかに警戒心が生まれてしまう。一定の距離を保つことが肝要になります。教え過ぎると「そんなこと分かっている」。あまり教えてあげないと「自分は無視されている」となる。接し方は本当に難しいものですね。
―――それは経験する中で失敗から学んだ教訓ですか?
アカデミーを立ち上げた頃から心掛けてきたことではありますが、この13年で少しずつブラッシュアップさせ、自分自身も成長させてもらいました。
―――GKが身に付けておくべき絶対的な条件はありますか?
誰でも平等にできると考えていた時期もありましたが、現役でプレーする期間が長くなっていった時や、指導の現場に携わるようになると、GKのポジションに就ける選手は限られているんだと考え方に変化が出てきました。その理由はまず、GKに適した性格は柔軟性が必要で、戦える肉体も不可欠だからです。
サッカーは体に負担のかかるスポーツですが、GKはフィールド選手に比べて特殊な仕事です。パワーやフィジカルがあるだけでは通用せず、反対にあり過ぎるとけがをしやすい。肉体的、精神的な「調整力」がないと難しいと思います。

―――小澤さんはパラグアイでプレーした最初の日本人GKです。在籍していた鹿島からの契約延長の申し出を固辞してまで、海外に進出しました。何とも強い精神力ですが、GKはメンタル強化も欠かせませんか?
子どもの頃はサッカー漫画『キャプテン翼』に出てくるGK若林源三に首ったけで、彼が西ドイツに行ったように私もいつか海外でやりたいと思っていました。グローブとスパイクだけ持って行ったんです。
メンタルを鍛えるといっても限界があり、やり過ぎると精神が壊れてしまいます。GKを希望する人はストイックで、練習方法やプレースタイル、生活リズムなどを確認して成長につなげるのは悪いことではないが、それができなかった時に自分で自分を壊しかねません。精神面を鍛え上げるというより、まずGKの魅力とサッカーの楽しさを感じてもらうことが何よりだと思いますね。GKが最後方から見た風景、GKが仲間にいろんなものを伝達していくうちに勇気や精神の強さは、自然と身に付くもの。メンタルトレーニングなどは決して悪くはありませんが、そこにこだわることもないはずです。
―――シュートストップはGKの見せ場でもあります。練習でうまくなるものですか?
右利き、左利きやキックに特長のある選手に蹴ってもらい、様々なケースを想定しシュートのタイミングを合わせることが大切。ポジショニングや1対1の駆け引きの練習でどんどんうまくなるので、数をこなさないといけません。
―――高校生の練習メニューで最も力を入れていることは?
どのカテゴリーでも実戦を意識することが重要ですが、高校生はなおさらです。捕球した後のフィードのやり方を常に頭に入れておくこと。シュート練習の中で考えるのではなく、ウオーミングアップの時から試合を意識しておくことが大切です。
(文:河野 正)