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心と頭が変わるとプレーが変わる!

人生を豊かにする
GKスキル

戦術やトレーニングメニューなど、GKに関する知識は書籍やインターネットで簡単に調べることができます。しかし、果敢なシュートストップや勢いのある飛び出しなど、積極的なプレーのコツ。より上達するためのトレーニングに対する心構えなど、GKの心と頭に深く関わる知識を見つけるのは難しいのではないでしょうか。

そこで、育成年代からJリーグのトップカテゴリーまで。全てのカテゴリーでGKコーチの経験がある、GK育成のスペシャリストである澤村氏が、自身の経験をもとに選手のスキルアップにつながる知識をお伝えしていきます。そして、本コラムを通して、選手の人生までもが豊かになることを目指していきます。

第12回目は、保護者や指導者といった、GKに関わる全ての大人たちに知ってほしいことをご紹介します。

【第12回】

GKに関わる、全ての大人たちへ。



大人の声かけが、
GKを変える。

保護者や指導者向けの講習会では「親」という字について、話すことがあります。「親」という字は「木」の上に「立」、そして「見」と書きます。そこには、「口」という文字はありません。つまり、子どもに対して口を出すのではなく、見守ることが親の役割なのです。もし、口を出したくなったら、悪い部分ではなく良い部分を指摘しましょう。3褒めて1叱るくらいのバランスを意識してください。そのようにして、調子が良い時は褒め、悪い時は叱るのではなく励ますのです。

「何でできないの」といった、ネガティブな言葉は禁止です。こうした言葉が、子どもを傷つける凶器になることを理解しなければなりません。できないプレーがあれば、できるようにトレーニングするのです。過去のプレーを掘り返すのではなく、未来に向かって取り組んでいく声かけを行ってください。

ケガをしない、
させないこと。

GKは5つのぶつかるもの(コラム9回目 に掲載)がありますので、まずはケガをしないようにプレーすることが重要。そのための決まりごとを守っていない場合などは、時に厳しい言葉で選手に伝えることもあります。また、相手選手などにケガさせてしまうようなプレーに対しても、同じように指導を行なっています。

機会があればぜひ大人も、ゴール前に立ってGKを体験してほしいと考えています。指導者もトレーニングのちょっとした時間に、GKにチャレンジしてみてください。そうすることで、「ゴールってやっぱり大きいな」、「どんな声かけを味方にすればいいのか」といった、指導のきっかけが生まれるはずです。GKの経験がない指導者も、選手と一緒に考えながらトレーニングに取り組んでみてください。

褒めるべき
ポイントを押さえる。

シュートを真正面でキャッチすることも、褒める要素のひとつになります。なぜなら、正面で止められたのは、ポジションが良かった証だからです。また、シュートを打たれた瞬間は、失点するピンチな場面。そこからシュートをキャッチすることでマイボールにし、GKがピンチをチャンスへと変えたのです。サッカーは得点した選手が目立ち賞賛されますが、シュートを止めて失点を防ぐことの大切さにも、指導者は目を向けてください。

GKを子どもに持つ保護者の中には、PKを見ていられないと言う方が多くいます。そこで「お子さんがPKを止めると決まっていても、目を閉じていますか」と聞くと、それならば見ると答えるのです。見ている保護者はPKの時点で、GKが失点してしまうと思い込んでいるのです。ぜひ、失点してしまうと決めつけず、お子さんを信じて見守ってあげてください。そして、失点がGKだけの責任であるかのように感じないでください。あくまでチームが失点しただけですので、GKとその保護者だけが責任を感じる必要はないのです。

経験を伝えるだけで
GKは成長できる。


指導者の中には、サッカーとGKを切り離して考える人が多いように感じます。しかし、優れたGKになるためには、各ポジションの役割、パスや攻撃、マークの優先順位など、サッカーを理解することが重要です。指導者が持つフィールダーとしての経験を伝えるだけでも、GKの指導となります。元FWの指導者であれば「このポジションは、相手がシュートを打ちにくいよ」といったアドバイスができるはずです。GK経験がない指導者であっても、彼らを育成することは可能なのです。

知らないこと、できないことが多いGKたちに、丁寧に自身の経験を伝えてください。指導者がGKに対して「何で取れないんだ」、「何でできないんだ」と言ってしまえば、その選手の人生が変わってしまいます。できなければ、できるまでトレーニングしていきましょう。そして、選手が伸びてきたら、それは指導が良かった証拠に他なりません。こうして選手の成長の中から、指導の良し悪しも判断できるのです。ぜひ「我以外皆我師」の精神で、選手と関わってください。

GKとはリスペクト
されるポジション。

GKの子どもを持つ保護者は、ぜひ彼らの良きサポーターでいてください。シュートに対して、体を張ってゴールを守る。チームの勝利のために、ゴールマウスに立つ。これらは、勇気がないとできないことです。指導者もチームの中でたったひとつしかないポジションである、GKをリスペクトしてあげてください。こうした取り組みが、GKを取り巻く環境を少しずつ良くしていくのです。

本コラムのまとめ。

  1. 親の役割は見守ること
  2. ケガを防ぐためのポイントを押さえる
  3. 指導者の経験を伝えてあげる
  4. GKに対するリスペクトを忘れない

企画・構成・文章/佐々木 貴智

12回に渡ってお送りしてきたこのGKコラムも、今回で最終回となります。様々な角度から、GKのスキルアップにつながる知識をお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか。みなさまのこれからのサッカー人生に、少しでもお役に立てば幸いです。長らくお付き合いいただき、ありがとうございました。

プロフィール

澤村公康コーチ

澤村 公康 / ゴーリースキーム代表

青山学院大学 GKアドバイザー
専修大学 GKアドバイザー

【指導歴】
1995年 - 1997年 鳥栖フューチャーズ 育成GKコーチ
1997年 ブレイズ熊本 育成GKコーチ
1998年 - 2003年3月 大津高校 GKコーチ/JFAナショナルトレセンコーチ
2003年4月 - 2008年1月 浦和レッドダイヤモンズ育成 GKコーチ/女子日本代表 GKコーチ/JFAナショナルコーチングスタッフ
2008年2月 - 2011年 川崎フロンターレ育成 GKコーチ/青山学院大学 GKコーチ
2012年 - 2014年 浜松開誠館中学校・高等学校 GKコーチ
2003年・2013年 日本高校選抜 GKコーチ
2015年 - 2018年 ロアッソ熊本 GKコーチ
2019年 サンフレッチェ広島 GKコーチ
2020年 現職

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