戦術やトレーニングメニューなど、GKに関する知識は書籍やインターネットで簡単に調べることができます。しかし、果敢なシュートストップや勢いのある飛び出しなど、積極的なプレーのコツ。より上達するためのトレーニングに対する心構えなど、GKの心と頭に深く関わる知識を見つけるのは難しいのではないでしょうか。
そこで、育成年代からJリーグのトップカテゴリーまで。全てのカテゴリーでGKコーチの経験がある、GK育成のスペシャリストである澤村氏が、自身の経験をもとに選手のスキルアップにつながる知識をお伝えしていきます。そして、本コラムを通して、選手の人生までもが豊かになることを目指していきます。
第9回目は、GKがケガなく安全にサッカーを楽しむために対応しなければならない、“5つのぶつかるもの”についてご紹介します。
ケガなくコンスタントに力を発揮するためには、“5つのぶつかるもの”を意識しながらプレーをする必要があります。GKはシュートを防ぐポジションなので、ボールにぶつかるイメージは強いと思います。しかし、それ以外にも4つのぶつかるものがあるのです。
ローリングダウンやダイビングなど、ゴールキーピングで倒れる際にグラウンドにぶつかります。また、プレー中はゴールポストにぶつかる可能性があります。クロスなどの対応時は、ゴール前で相手選手ともぶつかります。連携ミスが起こった際には、仲間と交錯しぶつかる危険性も。GKには、これだけぶつかるものが存在するのです。
GKはゴールを守るのと同時に、自分の身も守らなければなりません。優れた選手は体調管理を行いながら、トレーニングを欠かさず行い、コンスタントにゲームに出場します。それは、自分の身を守りながらケガを防ぎ、安定したプレーができているからなのです。
ケガを防ぐために“5つのぶつかるもの”を意識しながら、基本技術の習得を目指してください。キャッチングやボールの弾き方を身に付けないと、シュートを防ぐたびに突き指をしてしまいます。また、ローリングダウンなどの際は、グラウンドから身を守るために、地面に近い部分から徐々に倒れるようにしましょう。
正しいポジショニングをとることで、プレー中にゴールポストにぶつかる確率も減らせます。また、前に出てボールにアプローチする、ボールを待たずに早めにアプローチすることで、バーとボールの間に手を挟むといったアクシデントも回避できます。
1対1の飛び出しやクロスボールといったプレーでは、相手を圧倒するような声出しが有効です。「あのGKには近寄りたくないな」と思わせることで、相手FWが100でアタックする勢いを、60や70の勢いに抑えることも可能です。また、ハイボールはしっかりと片方の膝を立てて、相手をプロテクトしましょう。仲間に対しても声で連携し、自分がボールを取りに出るなら、大声で意思表示をすれば衝突を防げます。
GKはチームに一つしかないポジション。コンスタントにゲームに出て活躍しなければ、仲間からの信頼を得ることはできません。ファインセーブをしたとしても、それでケガをして交代すれば、また0から信頼を勝ち取っていかなくてはなりません。そうならないためにも、日々のトレーニングによってケガを防ぐ技術を身に付け、自分の身を守りながら、ゴールも守れる選手を目指しましょう。
健康だからこそ、サッカーを楽しめることを忘れないでください。声かけが不十分だったため、自分がケガをする、相手をさせてしまう場面を現場で多く見てきました。「ケガも含めてスポーツの内」とも言われますが、なるべく防いでいきたいもの。衝突の衝撃を和らげるために、GK専用のパッドなどもありますので、ビギナーの方やケガを防ぎたい方は積極的に活用してみてください。私がプレーヤーだった頃は、腰の打撲などに苦しめられましたが、こういったパッドで衝撃を緩和していました。
“5つのぶつかるもの”に対応するためには、基本技術の徹底が何より大切です。正しいキャッチング・セービングフォームを、身に付けてください。フォームは人それぞれ違いますので、痛くないキャッチングや着地の仕方を反復練習の中で見つけていきましょう。また、大きな声による意思表示や迫力・気迫を前面に出すことで、ゴールも自分の身も相手から守ることができます。
GKの基本技術を学んでみたい方は、GKスクール・クリニックに参加してみるのもよいでしょう。他にも書籍で調べてみる、インターネットで練習動画を観てみるなど、積極的に情報収集をしてみてください。
企画・構成・文章/佐々木 貴智