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【Ⅰ-後編】

日本とスペイン(世界)のGK比較

⇛どうすれば世界に通用するGKになれるか!

連載 第2回目は「日本とスペイン(世界)のゴールキーパー比較 ⇛ どうすれば世界に通用するゴールキーパーになれるか!」の後編をお送りします。

前編ではGKの身長について、1つ目の考え方をお伝えしました。今回は2つ目の考え方、身長よりも重要なことについて、具体的な例を挙げてお伝えしていきます。


身長よりも重要なこととは?

2つ目の考え方ですが、GKとして身長は重要ですが、もっと重要なのは正しいポジショニングとタイミングを学ぶことです。つまり正しい技術について学ぶ必要があります。GKは手が使えるわけですからジャンプし、手を伸ばしたらどの選手よりも高いところに届くはずです。その時にそもそもポジショニングが間違っていればいくら身長やジャンプ力があっても届かないですよね。世界的にも私はこの部分が多くのGKができていないと考えています。それは基準となるポジショニングを教えられるGKコーチが少ないからだと思います。

ゴールを決められた時に何が原因だったのか?多くのGKコーチは上半身の動きに注目しています。そのボールに届かなかった理由はポジショニングが悪かった、足を開きすぎて立っていたと下半身に原因があることが多い。でも、多くのGKコーチはボールと上半身に目がいってしまいます。

正しいポジションとは何か

そして、そもそも正しいポジションに対しての基準が曖昧です。 曖昧というは試合中にGKがボールがどこにあるかによって取るべきポジションは「ここ」という明確なものではなく、「この辺」というアバウトなままGKの感覚、センスに任せるということになっているからです。その選手の身体能力や感覚でポジショニングは変わるでしょうと。本当にそうなんでしょうか?私は疑問に思っていますし、どんなGKでも一番自分のプレーで失点の可能性を減らせる基準を私は持っています。

GKはピッチに書かれているライン(センターサークル、ペナルティーエリア、ペナルティーアーク、ゴールエリアなど)を基に、この角度でこのラインが見えるということは自分はここに立っているというをわざわざゴールを見なくてもわかるように教育しないといけないのです。

ちなみにポジションニングの基準については詳しく書きました

ジョアン・ミレッ
世界レベルのGK講座

ジョアン・ミレッ(監修)/倉本 和昌(著)


を読んでもらえればと思います。


話を戻すと日本人でも身長で言えば190cmを超える選手も出てきていますね。

例えばFC東京時代に林彰洋選手と2年トレーニングをしましたが、ヘタフェのコーチが来日して彼をみた時に「日本にもヨーロッパレベルのGKがいる」と言っていました。なぜなら正しくキャッチし、ポジショニングもとてもいい、それでいてハイボールにも強いからです。

つまり何が言いたいかというとGKコーチが正しい技術を正しい順番で教えることができれば、日本人GKは伸びていきますし、ヨーロッパのレベルに追いつきます。そして誰かと、何かと比較するというのはあんまり良いものだと思えません。つまり日本人で「デ・ヘアのような選手はどうやったら出てくるか?」という問いではなく、「どうやったら優秀な日本人GKが出てくるか?」という問いに変えないといけません。

例えばデ・ヘアと林選手だったらどっちが良いかというと私は迷うことなく林選手を選びます。それは私が基準としている技術的には上だからです。プレーしているチームと注目度は違いますが、正しいGK技術はどっちが発揮しているか?という視点で分析したときに日本人GKでヨーロッパのGKでもできていないことがきちんとできているGKはいるんです。

コーチがGKのことを正しく知ること

そうなるためにも何をしなければいけないかというとコーチが学び続けなければいけません。私はポジショニングの基準にしても、正しいキャッチに関しても20年以上の歳月を費やして考え出してきました。皆さんのコーチ歴は何年でしょうか? コーチ歴が長いから良いと言いたいわけではなく、皆さんの経験、知識と私の経験、知識とぜひシェアしたいんです。その中で私をうまく使ってもらいたいんです。私はGKコーチを始めた当時誰か自分にアドバイスをくれるような存在は一人もいませんでした。全部自分で試行錯誤するしかなかったんです。スペイン中にGKコーチが3人ぐらいしかいなかった時代です。

そして今日、わざわざ私がこれまで経験、試したことで間違っていたことをゼロベースで皆さんがやる必要はないと思うんです。コーチがGKのことを正しく知ること、そしてそこに時間を費やすことです。繰り返しになりますが、日本のGKのポテンシャルは本当に高いです。それを生かすも殺すも私たちGKコーチの裁量にかかっているのです。

次回【Ⅱ-前編】各カテゴリーのGKを指導した、ジョアン流育成術「育成とプロの違い」
2022年1月4日(火)
掲載予定です。



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