連載 第3回目は「Jリーグ、社会人地域リーグ、大学やユースのGKを指導して ⇛ 各カテゴリーのGKを指導した、ジョアン流育成術」の前編です。プロ選手から社会人、アマチュア選手、大学生…etc.様々なカテゴリのGKを指導してきたジョアンだからこそ気付いた観点を、育成とプロとの違いを交えてお伝えしていきます。
算数を学ぶ場合、数字に触れたことがなく30年間山にこもっていた人が地上に降りてきたときに、その人が30歳だから子供に教えるのと違うやり方をするでしょうか?目的は何かというと算数を正しく学ぶことです。
なので、子供であろうと、大人であろうとGKについて学ぶ過程は一緒になります。算数は足し算、引き算から始めて、このように発展させていくというのが体系立てられていますよね?子供もキャッチの練習から始めますし、アマチュアの選手、プロ選手、大学生も全員もキャッチから始めました。
皆、プレシーズン最初の時にキャッチングからやったわけですが、彼らが私に言いました「もうキャッチなんて基本的なこともう知っているよ」と。
「それは本当?」と聞くとそれはもちろんと言っていましたが、正しいキャッチできていなかったですし、なぜなのかそれがダメなのか、逆にどうしたら良いのか質問をしてみましたが、良い答えは返ってきませんでした。これはその選手たちがダメだといいたいのではなく、プロ選手でも「正しい技術の発揮の仕方」を習ってこなかったということなのです。というわけで技術習得に年齢は関係ありません。 私のアプローチの仕方は子どもでも、大人でも変わらない順番で行うということです。
ただしプロ選手は時間がないです。サッカーを人生を賭けてやっています。生活がかかっているわけですから、その分学ぶスピードは早いです。
子どもも学んでいきますが、まだゲーム感覚です。プロ選手はそのプレーに自分の人生、家族の人生がかかっています。
子供で言うとまずは自由に、自分が思うようにキャッチしてごらんとなります。当然きちんとできないでしょう。そこでこのやり方ではうまくとれない、これもうまくいかない、これもだめと やってはいけないことから教えていきます。最終的に「このやり方が正しい」と理解してもらいます。
ところがプロ選手だった場合、ストレートに「このとり方が正しい」と伝えます。なぜならゆっくりダメな理由を説明している時間がないからです。まずは試してもらいます。それでもなぜ「このやり方がダメなのか?」を聞いてくる選手はいます。その時に初めて「それをやるとこういうエラーが起こる、これもそう」と対話をします。
明日もう試合があるわけで、トレーニングの時間に「やってはいけない理由全てを説明している時間がないのです」これが育成とプロの1番の違いだと思います。
例えば竹は地中に出てくるまでかなりの年数がかかりますが、一度地中に出てくると早い時には1日で1mも伸びます。
育成年代は地中に眠っている竹と一緒でしっかりと根を張り、地中に出てきた時に一気に加速イメージです。ところがプロの世界は竹を植えて次の日にはもう出てこないといけないと言うイメージです。とはいえトレーニングの体系化は同じです。どういうことかというキャッチングから始まって技術アクションを教える順番は大人でも子どもでも変わらないということです。
日本で全てのカテゴリーをトレーニングして非常に良い感触を持っています。うまくなりたい!と言う選手は全員上手くなります。才能や身体能力が重要だと言われますが、まず私はGKとしてプレーするのが好きで、もっとよくなりたいと素直に思っていることが何より大切だと思っています。
次回【Ⅱ-後編】各カテゴリーのGKを指導した、ジョアン流育成術「ミスしたらどうするか」
2022年1月7日(金)
掲載予定です。